中露の大国化、世界の多極化(2)
【2007年6月12日】 すでに政治や軍事の分野では、ロシアと中国、中央アジア、南アジア、イランを束ねる「上海協力機構」が強化されている。上海協 力機構の枠組みが経済の分野に拡大されれば、ユーラシア版WTOとして機能しうる。欧米諸国の消費力は低下し、代わりに中国やインド、中近東諸国の消費力 が上がっている。製造業の面では中国が台頭しているし、エネルギーは中東とロシアにある。ユーラシア諸国は、欧米を無視した経済運営が可能になっている。
中国の大国化、世界の多極化
【2007年6月5日】 世界経済が、消費大国としての中国を必要としているということは、もはやアメリカが中国を、軍事攻撃や謀略的な争乱醸成によって 政権転覆して潰すことはあり得ないだろう、ということでもある。中国を政権転覆して潰したら、中国は大混乱になり、消費を拡大するどころではなくなる。先 進国は年3%しか経済成長していないが、中国は10%の成長を続けている。この成長は世界経済にとって必要不可欠になっている。
イランの台頭を容認するアメリカ
【2007年6月1日】 世界銀行がイラン・パキスタン・インドのパイプラインに融資することは、イスラエルの動きと真っ向から対立している。イスラエル 寄りのウォルフォウィッツが総裁を続けている限り、この融資が認められることはなかっただろうが、多極化容認のゼーリックが次期総裁になれば、融資は実現 する可能性が高くなる。イスラエルのイラン金融制裁強化戦略は、風穴を開けられて失敗に瀕する。
アメリカを中東から追い出すイラン
【2007年5月29日】 最近、中東各地で起きている出来事の全体像を見ると、アメリカの融和策は、イラクやその他の中東全域におけるイランの影響力の 拡大を引き起こしている。イランはアメリカの弱体化につけ込んで、アメリカをイラクから追い出し、アメリカの後ろ盾が頼りのイスラエルを潰そうとしている が、アメリカはこうしたイランの台頭を容認している。
エネルギー覇権を強めるロシア
【2007年5月22日】 ロシアのプーチン大統領が主導している天然ガスの非公式な新カルテルは、産油国のみの談合体だったOPECと異なり、中国やイ ンドといった非欧米の消費国が参加している。OPECに対しては、大口の消費国が結束して対抗し、OPEC以外の産油国からの石油輸入を増やたり、石油の 国際相場を投機で動かしてカルテル潰しができた。だが新カルテルでは、欧米諸国が結束してカルテルを潰そうとしても、カルテルの側は中国やインドに相対取 引でガスを売ればいいだけなので困らない。新カルテルは、欧米中心の世界体制を壊そうとする政治的な画策である。
ユーラシア鉄道新時代
【2007年5月15日】 米英のナショナリズムに立って考えれば、米英中心の世界体制の永続が望ましく、ロシアのランドブリッジ構想は潰され続ける必要 がある。だが、世界全体の経済発展を考えると、ロシアがランドブリッジになることは物流の効率化をもたらし、大きなプラスである。つまり、ベーリング海峡 トンネルに対し、米英のナショナリストは反対だが、キャピタリスト(資本家)は賛成である。今後も米英の覇権力の低下が続いた場合、トンネル構想が実現し ていく可能性が高まる。
イスラエル再戦争の瀬戸際
【2007年5月8日】 イスラエル政府内の現実派は、ガザに大攻撃をかける前に、すべきことはたくさんあると、政府内で主張した。エジプトからガザへの 武器搬入の秘密トンネルを探知する技術を向上させてトンネルを潰すとか、ガザに刺客(スパイ)を放ってハマスの軍事幹部を暗殺するとか、有人戦車ではなく 無人兵器を使って境界線近くのロケット砲発射施設を破壊するとかいった方法を、現実派はオルメルトに提案した。だがオルメルトは、現実派の案を却下した。
意味がなくなる日本の対米従属
【2007年5月1日】 戦後の日本の価値観では「アメリカは日本にとって絶対的に重要な国なので、首相が訪米時に中傷・侮辱されても、気がつかないふり をして耐えた方が良い」という考え方が強く、日本のマスコミは「安倍訪米で日米同盟はますます強い絆になった」という「見ないふり」報道が目立つ。しか し、日米を取り巻く情勢を全体的に見ると、もはや日本にとってアメリカだけが絶対的に重要である時代は終わりつつある。アメリカは衰退しつつあり、世界は 多極化しつつある。
世界経済の多極化とクラッシュ
【2007年4月24日】 米経済が落ち込んで、ドルが下落したら、ドルは世界の決済通貨として使えなくなり、中近東や東アジア、中南米などは、地域の決 済通貨を作ろうとするだろう。アメリカは、従来のような金融市場だけを使った国富の蓄積ができなくなる。その後のアメリカの復活は製造業などの輸出に頼る しかなくなるが、すでに米の製造業は死んでいる。米経済は2010年代に低迷しても、アメリカ人はアイデアが豊かなので、2020年代には復活するだろう が、そのころには中国やインドが台頭し、世界はすっかり多極化している。
疲弊する米軍
【2007年4月20日】 覇権国が、外国に対する軍事支配に失敗し、撤退できなくなって軍事力を浪費することを国際政治の用語で「オーバーストレッチ」 (過剰派兵)というが、アメリカはまさにこの状態に陥っている。覇権国は、他の諸国よりはるかに軍事力があるので、為政者は、侵略や占領に失敗しても「ま だまだ軍事的余力があるので、もう少し頑張れば勝てるはず」と思い続け、撤退すべき時期を逃し、無限に見えた軍事力をいつの間にか使い果たしてしまう。第 一次大戦前後のイギリスがこの状態になって覇権を失い、今またアメリカがこの状態になっている。
イラク石油利権をめぐる策動
【2007年4月17日】 イラクの石油新法は昨夏、ブッシュ政権によって提案されたが、そこには最初から「イラク3分割」を加速させる意図が見え隠れし ていた。3分割案は、石油をエサに、イラクのスンニ・シーア・クルドを分裂させ、相互に内戦させ、石油を出せない貧しい状態を永続させることが目的であ る。3分割は、欧米の石油会社の利益にはならない。「ブッシュは石油利権獲得のためにイラクを3分割するのだ」という、あちこちで見かける分析は浅薄であ る。
改善しそうな日中関係
【2007年4月12日】 日本の世論は、小泉時代に扇動されたままの「反中国・反朝鮮」だが、アメリカが作った今後の枠組みの中では、日本は中国だけで なく、北朝鮮とも仲良くしなければならないことが、すでに決められている。日本人がこの多極化のシナリオに従うのがいやなら「反米・反中国」の再鎖国路線 もありうるが、貿易上不利になり、貧しさに耐えねばならず、かなりの覚悟が必要だ。
全方位外交のアジア
【2007年4月10日】 日本は戦後一貫して、アメリカ以外の国と安保協定や戦略的関係を締結することを拒み、対米従属関係を絶対視してきた。1970 年代以来、米中枢の人々は、日本を全方位外交の方向に誘導しているが、日本側は一貫して消極姿勢だ。それを考えると、チェイニー副大統領は、日本を対米従 属絶対視の状況から脱出させようとして、日豪を訪問し、日豪安保協定を提案したのではないかと思えてくる。日豪協定は、日本を、アジアで最も全方位外交か ら遠い「対米従属絶対視」の従来状況から離脱させるきっかけとなるかもしれない。
イランの英兵釈放と中東大戦争
【2007年4月5日】 ブレアの対イラン戦略は、米イラン戦争を何とか回避しつつ、イランを譲歩させて対立を解消し、米英中心の世界体制と中東覇権を維 持するというものだ。ブレアは、イランとの対立を深めたくなかったはずだ。にもかかわらず、ブレア政権は、一方的な内容の地図を示し、イランを声高に非難 した。イギリスの軍と政府の上層部に、ブレアの戦略よりチェイニーの戦略を好む好戦的な勢力がいて、ブレアは彼らに間違った情報を与えられ、騙されて声高 なイラン非難をしたと推測できる。だからこそ、ブレアはその後、柔軟姿勢に転換し、英兵士の早期釈放が実現した。
日米同盟を揺るがす慰安婦問題
【2007年4月3日】 ブッシュ政権は、6カ国協議がまとまるまでは日米同盟を維持するが、協議がまとまって、北朝鮮の核廃棄、南北和解、在韓米軍の撤 退、東アジア集団安保体制の立ち上げなどを進展させる新段階に入った時点で、日米同盟に亀裂を入れる行為としての、日本の戦争責任問題の蒸し返しが始めた のかもしれない。6カ国協議はアメリカが東アジアを中国中心・アメリカ抜きの独自安保体制に移行させる動きであり、米朝と南北の緊張緩和が軌道に乗った ら、次は日本を対米従属から引き剥がす戦略が始まっても不思議はない。
歴史を繰り返させる人々
【2007年3月27日】 ニクソン政権、レーガン政権、ブッシュ政権という3つの共和党政権は、いずれも隠れ多極主義を内包していた。キッシンジャーか らシュルツ、チェイニー、ライス、ネオコンへの人脈の流れを見ると、3つの政権の繰り返しは偶然の産物ではなく、シナリオに沿った政権運営の結果である。 3政権は、財政面でも自滅的な戦略を展開し、ニクソン政権では金本位制の崩壊という1971年の「ニクソン・ショック」が起こり、レーガン政権ではドル 安・円マルク高を決めた1985年の「プラザ合意」を行っている。ブッシュ政権でも、いずれドルの大幅下落があると予測される。
反米諸国に移る石油利権
【2007年3月20日】 FT紙によると、今や米英の石油会社は世界の石油利権を支配していない。米英のセブン・シスターズは、すでに「旧シスターズ」 になってしまっており、代わりに欧米以外の国有石油会社が「新シスターズ」を結成し、世界の石油と天然ガスの利権を握るようになっているという。新しいセ ブン・シスターズとは、サウジアラビアのサウジアラムコ、ロシアのガスプロム、中国のCNPC(中国石油天然ガス集団)、イランのNIOC、ベネズエラの PDVSA、ブラジルのペトロブラス、マレーシアのペトロナスの7社である。
石油の国際政治
【2007年3月13日】 考察の一つは「1973年の石油危機など、70年代から80年代初頭にかけての石油高騰は、中東で台頭したイスラエルを再び弱 体化させるため、サウジアラビアなどOPECの産油国の高騰作戦をアメリカが黙認した結果、起きたのではないか」ということである。「アメリカは、石油危 機を防ぎたかったのだができなかった」というのが通説だが、世界中の国々に強い影響力を持っているアメリカは、産油国どうしを対立させて石油の供給を増や して石油価格を下げることが可能である。何年も異様な高値が続くのは奇妙だ。
中東大戦争は回避されるか
【2007年3月8日】 ブッシュ政権が、北朝鮮やロシアなどに対して行った戦略と同じ「反米勢力強化策」をイランに対しても採るなら、アメリカはイラン に対する戦争をやるふりを行っているだけで、実際の戦争は回避されるかもしれない。だが、中東でこれから戦争が全く起きなくても、アメリカは中東での影響 力を後退させるだろうから、イスラエルはしだいに窮地に陥る。アラブ諸国が要求している難民帰還権が施行された場合、イスラエルは国内に多くのパレスチナ 人(アラブ人)を抱え「ユダヤ人のための国家」という国是が崩れる。これは、シオニストにとって絶対に防がねばならない事態だ。シオニストがこのまま戦争 を誘発せず、アラブ諸国やイランの台頭を容認するとは考えにくい。
アメリカ経済の延命策の終わりとその後
【2007年3月6日】 前回、1998年から2000年にかけて、世界的な通貨危機、新興市場投資ブームの終焉、アメリカのハイテク株バブル崩壊による 株安という混乱期があった。その混乱は、01年からのアメリカの低金利による住宅市況の上昇という新たな延命策によって収束し、05年までの米経済の活況 につながった。しかしその延命策も、今起きている住宅バブルの崩壊によって終わりつつある。今後、世界経済の延命策もしくは新たなシステムの導入はあり得 るのか。それを考えた場合、一つの答えとして浮上しそうなのが「多極化」である。
地球温暖化の国際政治学
【2007年2月27日】 クリントン政権の「経済グローバリゼーション」の戦略は、世界経済の発展の中心が、先進国から発展途上国に移ることを是認した 上で、発展途上国の儲けの一部が米英の側に転がり込むようにする「ピンはね」の作戦だった。地球温暖化問題も、ピンはね作戦の一つである。二酸化炭素の排 出が多い途上国は、先進国に金を払って排出権を買う必要がある。途上国は、先進国から新たな税金を取り立てられるようなものである。ゴアやブレアといった 米英のナショナリストが、途上国から新たな税金を取り立てるために温暖化問題を誇張するのは当然だし、誇張や歪曲は、愛国心に基づいた作戦として正当化で きる。
地球温暖化のエセ科学
【2007年2月20日】 IPCCには130カ国の2500人の科学者が参加している。ほとんどの学者は、政治的に中立な立場で、純粋に科学的な根拠の みで温暖化を論じようとしている。問題はIPCCの事務局にある。事務局の中に、温暖化をことさら誇張し、二酸化炭素など人類の排出物が温暖化の原因であ るという話を反論不能な「真実」にしてしまおうと画策する「政治活動家」がいて、彼らが(イギリスなどの)政治家と一緒に、議論の結果を歪曲して発表して いる。
北朝鮮6カ国合意と拉致問題
【2007年2月16日】 冷戦後、北朝鮮が起こす問題は、東アジアの最大の不安定要因だった。クリントン政権までは、この問題をアメリカだけで解決しよ うとしていたが、ブッシュ政権は、中国を中心とする東アジア諸国が解決し、アメリカはそれに協力するという多極化戦略に転換した。この転換を受けた日本政 府の対応が「拉致問題が解決されない限り、北朝鮮とは交渉不能」という状況を演出することだった。
イラク開戦前と似た感じ
【2007年2月13日】 常識的に考えて、人間は、一度やってばれた不正行為を再びやろうとするときには、不正の手口を変えるなどして、ばれないように 工夫する。だがブッシュ政権は、前回と同じ手口を繰り返し、ばれてもかまわないという感じで、イランに侵攻する口実を作っている。意識的に同じ手口を繰り 返している印象を受ける。私は以前から「ブッシュ政権は、軍事・外交・財政という全ての面で、意図的に失敗し、アメリカを自滅させようとしているのではな いか」と感じているが、そのパターンがまた現れている。
クルドの独立、トルコの変身
【2007年2月9日】 クルド人がキルクークの「クルド化」を強行した場合、隣接するトルコが、イラクに侵攻してくる。トルコを支援するため、イランが 北イラクに侵攻する可能性もある。アメリカはこれを開戦事由として、イランとの全面戦争に入るかもしれない。クルドの独立阻止という点では、シリアや、イ ラクのシーア派とスンニ派も、トルコやイランと同じ利害なので、トルコ・イラン・シリア・イラク(ゲリラ)が、クルド人・アメリカ・イスラエルと戦うとい う構図の大戦争があり得る。
朝鮮半島を非米化するアメリカ
【2007年2月6日】 アメリカは中東の戦争で手一杯だから、北朝鮮の核開発問題は、空爆などの軍事で解決できない。北との和平条約の締結と引き換えに 解決するしかない。和平条約が発効し、朝鮮戦争の終結が宣言されると、朝鮮戦争の休戦を維持監視するために存在していた国連軍は必要なくなり、国連軍の名 目で韓国に駐留していた在韓米軍の存在意義が失われる。在韓米軍の撤退は、米韓の軍事同盟を終わらせ、韓国をアメリカの傘下から中国の傘下へと移転させ、 韓国における親米右派を衰退させ、反米左派を盛り上げる。ブッシュ政権の行動からは、それでもかまわないと思っていることがうかがえる。アメリカは韓国を 非米化しようとしている。
扇動されるスンニとシーアの対立
【2007年2月1日】 イランとの戦争が始まったら、イスラム諸国の世論は「反米」に大きく振れる。その反米感情を少しでも抑止するために、アメリカ は、親米アラブ諸国を「反イラン」で結束させようとしている。親米アラブ諸国のスンニ派の政府系の聖職者たちは「シーア派は異端である」といった説教を行 うことで、信徒たちの心の中に「イスラム教徒としての結束」ではなく「スンニ派が、シーア派のイランを憎む構図」を作ろうとしている。
北朝鮮・イランと世界の多極化
【2007年1月30日】 アメリカとイギリス、イスラエルの関係史を踏まえると、アメリカが世界を多極化するためには、単に中国やロシアを台頭させるだ けではダメで「米英イスラエルを中心とする『正義』の諸国と、ソ連やイスラム教徒など適当な『悪』との半永久的な戦い」の世界システムを作ることで、多極 体制の実現を不可能にしてきたイギリスやイスラエルを無力化することが必要だと分かる。
北朝鮮問題の解決が近い
【2007年1月23日】 ベルリンでの米朝協議の翌日に北朝鮮が「協議は前向きで誠実だった」と言っているということは、アメリカは北朝鮮にCVID (厳格な核の破棄)を求めなかったということである。北朝鮮が満足しているということは、今後アメリカが北朝鮮の核施設を査察しても、北側は核兵器の技術 をうまく隠すことができそうで、また必要になったら核兵器を作れそうだということでもある。
人権外交の終わり
【2007年1月18日】 中国とロシアは、ミャンマー問題に関する今回の拒否権発動で「安保理では、一つの国の内部だけで起きている人権問題について、 二度と決議をしない。その問題は軍事力行使の決定権を持たない人権理事会でやるべきだ」という決意を表明した。従来なら、中露の決意は、欧米日の「国際社 会」の総意によって潰されただろう。しかし今、米英の覇権は失墜しつつあり、おそらく今後さらに米英中心の世界体制は崩れる。中露の拒否権発動は、まさに この攻守逆転の中で発せられており、世界の多極化を推進する動きの一つになっている。
すでに米イラン戦争が始まっている?
【2007年1月16日】 ペルシャ湾に空母を2隻派遣したり、イランのミサイル攻撃に対抗するかのようにサウジアラビアやイスラエルにパトリオット迎撃 ミサイルが配備されたり、米軍の新司令官に上陸作戦の専門家の海軍大将が選ばれたり、ブッシュ政権のイラクに対する新戦略の多くは、実はイラン攻撃の準備 なのではないかと疑われる。ブッシュは、すでに側近にイランとの戦争計画を立てさせ、秘密裏に国防総省、CIAなどに対して計画実行の命令を下したのでは ないか、と考えることもできる。
イスラエルがイランを核攻撃する?
【2007年1月9日】 1月7日、イギリスの新聞サンデータイムスは「イスラエルが、戦術核兵器を使ってイランのウラン濃縮工場を破壊する計画を秘密裏 に進めている」と報じた。攻撃はイスラエル空軍の爆撃機で行われる予定で、すでに2つの飛行隊が、イスラエルからイランの核施設を攻撃してイスラエルに帰 還するという想定で、ジブラルタルのイギリス軍基地までの飛行訓練を実施したという。
閉じられるアメリカの核の傘
【2007年1月4日】今後、アメリカが中東での戦争をイランに拡大し、中東の大戦争の中で軍事力と外交力を低下させた場合、アメリカは余裕がなくなり、 国力を温存するためにできる限り海外から軍事力を撤退しようとする可能性が大きくなる。日本は独力で自国を守ってくれと言われる傾向が強まる。だから、今 のうちから「日本は核武装すべきか」という議論が必要になる。
半年以内に米イラン戦争が始まる?
【2006年12月28日】米空母2隻のペルシャ湾派遣、対イラン国連決議などから、アメリカがイランと戦争に入る可能性が高まっていると感じられるが、 開戦するとしたら時期はいつなのか。最近、中東情勢をめぐる出来事や要人発言をウォッチしていると、来年3月から6月ごろに、イランとの戦争が始まるので はないかと感じさせる発言や出来事がいくつもあることに気づく。
近づいてきたドル崩壊
【2006年12月26日】 今後のアメリカ経済は、2007年から08年にかけて住宅バブルの崩壊で不況になり、税収が減る一方でメディケアや防衛費な どの政府支出は増え、今後の数年間で財政赤字が急拡大する。その間にアメリカの中産階級は消滅し、国全体としての消費力が減り、今後10年ぐらいかけて財 政が再建されても、そのころには、旺盛に消費できる世界経済の牽引役という従来のアメリカの姿は、二度と再現できない過去の話になっている。この過程のど こかの時点で、ドルは世界通貨としての役割を終える。
大戦争になる中東(3)
【2006年12月20日】 イランに戦争を仕掛けるのはイスラエルにとって成功率の低い賭けなので、今のところイスラエルでも戦争を主張しているのは右 派だけで、オルメルト政権は好戦的な世論に抵抗している。しかし、おそらくレバノンとパレスチナで親米派が壊滅するのは時間の問題だから、オルメルトが抵 抗を続けられるのも時間の問題で、いずれイスラエルはイランに戦争を仕掛けざるを得なくなる。
多極化に圧されるNATO
【2006年12月12日】 NATOに対する仏シラク大統領の提案は、欧米の集団安保組織であるNATOと、中露の集団安保組織である「上海協力機構」 などが、協力し合う体制を作ろうとしており、世界の多極化を容認するものだ。アメリカの自滅的強硬姿勢を危険視する傾向が強い欧州では、ドイツなど多くの 国がシラク提案に賛同している。欧州は、国際的に危険な存在となったアメリカを抑えるため、中国やロシアの台頭を容認するようになった。
アフガンで潰れゆくNATO
【2006年12月7日】 アフガニスタンに関して、イギリスやカナダなどNATO諸国は、2001年からの5年間の米軍統治によって、タリバンの残党は ほぼ一掃され、あとは小規模の小競り合いのゲリラ戦があるぐらいだと考えていたから、予算も装備も兵力も、大した準備をしないまま、米軍から占領を引き継 いだ。しかし、これは大きな間違いだった。関係者の間では「もうNATOは勝てない」という見方が強まっている。
自滅の仕上げに入った米イラク戦争
【2006年12月5日】 イラクでは今後、シーア派の中の最大勢力であるサドル師の派閥が、スンニ派など他の勢力に呼びかけて、反米の連合戦線を組織 し、イラク議会を席巻する動きが強まりそうだ。275議席のイラク議会のうち、すでに100人の議員が、反米連合戦線に参加する意向を表明したという。ア メリカがイラク占領を長引かせているうちに、イラク人は宗派を超えて反米で結束し、米軍撤退要求を決議するようになりそうである。
レバノンの暗殺と中東再編
【2006年11月28日】 中東のイスラム世界は、イランを中心に再編されつつある。そしてその一方で、イスラム世界を支配する側だったアメリカ、イギ リス、フランスとイスラエルは、追い出される方向にある。レバノンの閣僚暗殺事件は、この流れの中で分析すると、よく理解できる。
中国の台頭と日本の未来
【2006年11月21日】 かつて、アジア・アフリカなどの多くの発展途上国にとって、日本は発展のモデルだった。世界には、欧米文明以外の文明に立脚 している国が多いが、日本が、日本的なものを残したまま、欧米の技術やノウハウを取り入れて発展に成功したことは、同様に富国強兵を目指す非欧米系の国々 にとってお手本だった。ところが今、多くの途上国にとって、日本をしのぐ発展のお手本になりつつある国がある。それは、中国である。
「一人負け」の日本
【2006年11月16日】 911後のアメリカが故意の失策を繰り返し、何も変わっていないかのように見せながら隠然と世界から手を引き始めている今の 新状況に、日本も早く気づき、次の国是を考え、対策を打った方が良い。韓国や中国、ロシアは、すでに新状況に気づいている。北朝鮮の金正日も、もう気づい たかもしれない。このままでは、日本だけが出遅れて「一人負け」することになる。
ブッシュ変節の意味
【2006年11月14日】 ブッシュは、中間選挙での共和党の敗北が決定する前に、早々と負けを認め、民主党に超党派での協調を呼びかけた。この変節 は、ホワイトハウス内の黒幕たちが、中間選挙で負けることを想定して事前に考えていたもので、選挙の敗北という好機を使って方向転換が行われたと私には感 じられる。黒幕たちは「民主党から要求されてやむを得ず」というかたちをとりつつ、イラクからの早期撤退を実現しようとしている。
米中間選挙後に世界は混乱する?
【2006年11月7日】 アメリカで、ここ数カ月の株価上昇など経済の活況は、ブッシュ政権の「下落防止チーム」による粉飾的な選挙対策だったのではないかという見方が出ている。・・・
不正が予測される米中間選挙
【2006年11月3日】 アメリカの電子式投票機の大手メーカーは3社あるが、最も台数が多いのは「ディーボルド社」の「アキュボート」 (AccuVote)という製品で、全米の投票所の約4割が、この投票機を使っている。この製品名は「正確な(accurate)投票(vote)結果を 出す機械」という意味でつけられたのだろう。だがこのマシンは、名前が示すものとは正反対の、不正な投票結果を出してしまうことで、アメリカの選挙専門家 の間で有名になりつつある。
アジアのことをアジアに任せる
【2006年10月31日】 北朝鮮の核実験を機に中国は、これまでよりも自主的、能動的に北朝鮮に対する手綱を持つようになった。アジアのことはアジア に任せるというアメリカの戦略は、北朝鮮の核実験を機に、中国の能動的な覇権活動、安倍訪中による日中敵対の終息などが引き起こされたことで、ようやく実 を結び始めている。
日本の核武装とアメリカ
【2006年10月24日】 軍事費も兵力も足りないアメリカでは、日本が核武装したら「もはや日本はアメリカの核の傘の下にいないので、アメリカに頼ら ず自分で防衛した方が、アメリカにとってもコスト安になる」という議論が出てきかねない。すでに韓国では、韓国側がアメリカ側に「韓国はアメリカの核の傘 の下にあると言ってほしい」と求めているのに対し、米側は「前向きに検討する」としか答えない状態になっている。
アメリカ中東支配の終わり
【2006年10月21日】「中東混乱期の夜明け」と題するCFR会長の論文は、アメリカはイラク占領の失敗と、パレスチナ和平の失敗、穏健な親米アラブ 諸国がイスラム過激派を抑えることに失敗したことによって、中東でのアメリカの影響力が減退したと書いている。今後も、アメリカが中東で最大の影響力を持 つことは変わらないものの、アメリカの減退と入れ替わりにEUやロシア、中国などからの影響が強まりそうだと予測している。
中国が北朝鮮を政権転覆する?
【2006年10月19日】 中国政府が北朝鮮に対する態度を硬化させたのは、核実験が実施されたことが最大の原因ではない。核実験は、態度硬化のきっか けでしかない。中国が北朝鮮を批判したり、政権転覆支援を示唆したりする本質的な理由はおそらく、中国が北朝鮮にアドバイスした経済開放政策が進まず、中 国が目指してきた「北朝鮮を中国のような社会主義市場経済に軟着陸させていく」という目標が実現していないからである。
安倍訪中と北朝鮮の核実験
【2006年10月17日】 北朝鮮の核実験が不可避になった時点で、中国側は金正日に「中国が良いと言ってから実験を実施せよ」と命じる一方、アメリカ に「核実験後の北朝鮮との交渉に中国が責任を持つから、その代わり日本の安倍に、首相になったらすぐ中国に来いと言ってほしい」と求め、かねがね中国に責 任を持たせたいと思っていたアメリカは中国の提案に応じ、安倍に「もうすぐ北朝鮮が核実験するから、早く中国との関係を改善しなきゃダメだ」と強く言って 訪中を実現させ、中国は北朝鮮に「安倍が中国を離れたら核実験しても良い」とゴーサインを出し、核実験は安倍が北京から離れた半日後に実施された、という のが私の仮説である。
イスラエルとアラブの接近
【2006年10月10日】 イスラエルを弱めてしまった7-8月のレバノン戦争後、占領地からの撤退は危険だと考える世論がイスラエルで強くなり、撤退 は棚上げされた。だが、このままではパレスチナ問題に対する現実的な戦略が欠如している。そのためオルメルトは、アラブ側と交渉する戦略を新たに採用し た。サウジ側は「イスラエルが弱くなった今こそ、アブドラ提案を実現できる機会だ」と考え、オルメルトと会談した。
原油安で経済軟着陸?
【2006年10月3日】 8月まで、米中枢からは、石油価格の高騰に歯止めをかけようとする実質的な動きが何もなかったことを考えると、ここにきて石油 価格を下げ、米経済の不況突入を避けようとする動きが出てきたことは、注目すべきである。不況は避けられないだろうが、ソフトランディングはできるかもし れない。
アメリカ発の世界不況が起きる(2)
【2006年9月30日】 アメリカ中枢の人々は、本当は不況の懸念が強まって金利が逆転しているにもかかわらず「あれは不況の予兆とは違う」という見方 を定着させ「不況を防止した方がよい」という世論の出現を食い止めて、不況を確実に発生させようとしているのではないか。
国際協調主義の再登場
【2006年9月26日】 米軍を成功裏にイラクから撤退させるには、イラク情勢の安定化が不可欠で、そのためには、反米ゲリラの強さの源泉であるイラク 国民の反米感情を緩和する必要があり、それにはブッシュ政権が好戦的な姿勢をやめて協調主義的な態度に転換せねばならない。中東の人々の反米感情を緩和す るには、パレスチナ問題を解決し、イランとの戦争を避けねばならない。米軍の撤退には、パレスチナ問題とイラン問題の平和的な解決が必要となる。加えて、 イラクと国境を接するシリアとの和解も必要だ。ベーカーの組織は、すべてを一括して解決しようとしている。
多極化と日本(2)北方領土と対米従属
【2006年9月19日】 日本政府が4島返還にこだわるのは、それを言っている限り、ロシアと和解せずにすみ、日本が外交的にアメリカだけと緊密な関係 であり続けられ、対米従属戦略を継続できるからだ。日本は、軍事的にアメリカの「核の傘」の下にあり、自衛隊は米軍の一部のように機能しているが、同様 に、日本は外交的にもアメリカの世界戦略の傘の下にあり、外務省はアメリカ国務省の分室のようである。戦後しばらくは、アメリカからの圧力で、日本は対米 従属を強いられていたかもしれないが、この体制はしだいに日本にとって、安心できて気楽で心地よいものとなった。
多極化と日本(1)
【2006年9月12日】 最近、日本は対米従属が続けられなくなるかもしれないという前提で問題提起をした人がいる。中曽根元首相である。中曽根氏は9 月5日の記者会見で「米国の態度が必ずしも今まで通り続くか予断を許さない。核兵器問題も研究しておく必要がある」と強調した。発言は、アメリカが覇権を 失墜したり、孤立主義に陥ったりして、日本は対米従属が維持できなくなる懸念があるという趣旨だと解釈できる。
イランとイスラエルを戦争させる
【2006年9月6日】 すでにイスラエルは、北のヒズボラと南のハマスという、イランに支援された2つの武装勢力によって狙われている。今後、中東でイ ランの影響力が上がり、アメリカの影響力が下がり続ければ、後ろ盾を失ったイスラエルを一気に武力で潰すべきだという過激派の考え方が、中東でますます優 勢になる。イスラエルにとって、非常に危険なことである。
見放されたネパール国王
【2006年8月29日】 ギャネンドラ国王が、早い段階でインドやアメリカの要請に従っていたら、ネパールの混乱は収拾していたかもしれないが、ギャネ ンドラは別の考えを持っていた。彼は、マオイストは「テロ組織」なのだから、自分がマオイストと戦うのは、アメリカのブッシュ大統領が取り組んでいるのと 同じ「テロ戦争」であり、ブッシュと同様、自分も、ネパールの民主主義を制限して国王の権限を拡大しても、国際社会から許されるはずだと考えた。しかし、 アメリカはそのようには考えてくれなかった。むしろ「独裁者が民主主義を弾圧している」という図式でとらえられた。
ヒズボラの勝利
【2006年8月22日】・・・ところが意外なことに、この土壇場の状況で、アメリカが突然に譲歩した。アメリカのボルトン国連代表は、議場から席を外 し、30分後に戻ってくると、停戦案の最大の対立点だった、国連憲章7章に基づいた武力行使権を国連軍に付与する条項について、アラブ側の要求を受け入 れ、武力行使権を削除しても良いという譲歩を行った。アメリカの譲歩により、停戦案はまとまったが、国連軍の力行使権は削除され、誰もヒズボラを武装解除 しない状況が作られることになった。
アメリカは破産する?
【2006年8月15日】 日本も財政赤字は危機的だが、私がアメリカの方がはるかに危いと思うのは、チェイニーのように財政赤字を故意に急増させたがる多極主義的な勢力が政権中枢におり、多くの人は彼らの戦略に気づいてすらいないからである。
アメリカにつぶされるイスラエル
【2006年8月8日】 アメリカの政治家の中には、共和党にも民主党にも「イスラエル支持」を叫びながら、その一方で米軍のイラク撤退をブッシュに要求 している人が多い。民主党から次期大統領を狙うヒラリー・クリントンなどが好例である。ここで私が勘ぐっているのは、アメリカの政界やホワイトハウスに は、実はイスラエルを潰したいと考えている人が多いのではないかということである。
大戦争になる中東(2)
【2006年8月1日】 アメリカ政府は表向き、レバノンでの停戦に向けてライス国務長官らが外交努力を続けているように見せているが、これはアメリカの 外交力に期待する国際社会の目を欺くための見せかけであり、実はイスラエルが戦火をシリアやイランに拡大することを誘発しているのではないかと私には思え る。
世界に嫌われたいイスラエル
【2006年7月27日】 イスラエルのレバノン攻撃のやり方は、故意に国際社会を怒らせようとしているかのようだ。イスラエルがこんなことをやる目的 は、おそらく、アメリカ軍をレバノン南部に駐留させ、イスラエルの防衛を担当させたいからである。イスラエルは、戦争開始と同時に市民の避難路を破壊し、 逃げ遅れた外国人やレバノンの一般市民を「人質」にして、人質がいたぶられる姿を世界にテレビに放映させ、アメリカが国際社会からの圧力に耐えられなく なって軍隊を派遣してくることを待っている。
戦争とマスコミ
【2006年7月25日】・・・翌日のBBCニュースでは、ハイファに滞在する記者が「ハイファ市民は意外と冷静です」と現地レポートを始めたとたん、映 像が途切れてしまった。BBCが「イスラエル市民は意外と冷静で、ミサイルの着弾現場には野次馬がたくさん来ています」といった現実を報道してしまうと、 世界の世論にイスラエルを不利にする悪影響を与えかねない。だから軍が放送をカットしたのではないかと思われた。
大戦争になる中東
【2006年7月23日】 ブッシュ大統領がイランとの戦争を回避したいと考え続けても、イスラエルの苦戦がしだいに明らかになり、イスラエルがアメリカ を巻き込もうとイランの戦争に入る懸念が強まっているため、イラクに軍を駐留させているアメリカが、この戦争から逃れられる可能性はしだいに低下してい る。アメリカがイラン、シリアとの戦争に入ることこそ、ネオコンが強く求めていることである。
イスラエルの逆上
【2006年7月19日】 イスラエルは、なぜ戦争を拡大しようとするのか。私の見るところでは、今のイスラエルの内部は一枚岩ではない。占領地撤退を進 めたい「現実派」と、あくまでもパレスチナ・アラブ側との戦いを好む「右派」とが対立し、暗闘している。今回の戦争は、イスラエル内部の暗闘の中で、右派 がクーデター的に起こしたものである。
ウォール街と中国
【2006年7月14日】 ブッシュ政権の残りの2年間で経済政策がうまく行く可能性は低いのに、財務長官への就任をポールソンが引き受けたのは、何か隠 れたメリットがあるからに違いない。私が疑っているのは「ポールソンは、中国の経済発展で儲けているウォール街(アメリカの金融業界)を代表して財務長官 になり、中国経済の発展を阻害しないかたちで人民元の切り上げを実現しようとしているのではないか」ということである。
北朝鮮ミサイル危機と日本
【2006年7月11日】 日本は、日米同盟の強化を願って、北朝鮮に対する強硬姿勢をとっているが、この姿勢を利用してアメリカは、日本の願いとは逆 に、中国中心のアジア諸国に、アメリカから自立した新体制を作らせようとしている。北朝鮮に対する中国の外交努力が成功したら、朝鮮半島は中国と韓国、ロ シア、北朝鮮という当事者間の話し合いで動くようになる。アメリカは、東アジアおける覇権の多極化を容認する度合いを強める。日米同盟強化を目的とした日 本の強硬姿勢は、結果的に、日米同盟の空洞化を進めかねない。
北朝鮮ミサイル危機で見えたもの
【2006年7月7日】 ブッシュ政権が、イラクやイランに対しては好戦的な方針なのに、北朝鮮に対してだけは「脅威ではない」と言うのは、そうしないと 中国が6カ国協議の主導役を務めてくれなくなるからである。中国は、アメリカに敵視されることを恐れている。中国を警戒させないためには、ブッシュ政権 は、緊張が高まるごとに「北朝鮮を攻撃しない」と言い続ける必要がある。中国は、アメリカとの敵対は避けたいが、アジアでの覇権国にはなりたいと考えてい る。ブッシュ政権は、この中国の野心を利用して、北朝鮮問題の解決を中国にやらせている。
中国経済の危機
【2006年6月27日】 不動産や鉄鋼、自動車、エアコンなどに対する過剰投資の状態が起きていることは、中国の経済成長の質に大きな影を落としてい る。ここ数年の中国の経済成長を見ると、全体としての成長率は8-10%だが、その要因の6-7割は、固定資本形成、つまりビルや道路、工場設備などを作 ることによる経済成長である。ビルや工場設備への投資の中には、使われない、売れない過剰投資が多い。この過剰な部分は近い将来、確実に減少すると予測さ れる。投資バブルの崩壊である。
自衛隊イラク撤退の意味
【2006年6月20日】 イギリスが日本やオーストラリアと協議し、日本のサマワ撤退計画が浮上したのは、ブレアの訪米が失敗し、米政界が撤退否定に向 けて議論をしていたときである。ブレアの訪米の失敗により、イギリスがアメリカを協調主義に引き戻す計画は失敗で終わり、英日豪はアメリカより先に撤退に 動くことになった。
文明の衝突と東チモール
【2006年6月17日】 冷戦時代には、インドネシアは「反共」でアメリカの味方であり、左翼的傾向が強い東チモールのゲリラ組織は味方ではなかった。 しかし、冷戦後の次の50年戦争となるべき「文明の衝突」では善悪が逆転し、インドネシアはイスラム教徒の国なので「敵方」であり、東チモールは住民の 90%以上がキリスト教徒なので「欧米側」である。東チモールは、オーストラリアに守られつつインドネシアから独立を勝ち取ることで「イスラム包囲網」の 一部となった。だが、話はここで終わらなかった・・・
アメリカの「第2独立戦争」
【2006年6月13日】 アメリカは、領土的には1783年にイギリスから独立している。しかし、アメリカの世界戦略の中に、イギリスにとって都合が良 い半面、必ずしもアメリカ自身の国益に沿っていないものが多いことを考えると、アメリカは特に第二次大戦後、イギリスによって傀儡的に動かされているよう な印象を受ける。ヒットラー敵視や冷戦(ソ連・中国敵視)など、正義感の強いアメリカ人の世論がイデオロギー的に動かされて採られた戦略は、いずれもイギ リスに大きな利益を与えている。
つぶされるCIA
【2006年5月30日】・・・ハイデンがNSA長官として行った「失策」は、うまくやろうと思ったのに失敗したのではなく、故意にNSAの機能を潰した のであり、これからCIA長官になったら、こんどはCIAの機能を潰しにかかるのではないか、と推測される。ハイデンを長官に迎えるにあたって「もう CIAは終わりだ」という声がCIA内部から出ていると報じられている。
やはり仕組まれていた911
【2006年5月16日】・・・結局、アメリカ、ドイツ、スペインのいずれの裁判でも、被告がアルカイダの関係者(同情者)であることは立証できても、 911のテロ計画に関与していたことは立証できなかった。「911の犯人はアルカイダだ」ということは、米当局が主張し、マスコミが事実であるかのように 報じただけで、実は事実ではないことが、ほぼ確定した。「アルカイダに同情すること自体、十分犯罪的なことだ」と考える人もいるかもしれないが、本末転倒 だ。アルカイダが911の犯人であることが立証された上でなら、アルカイダへの同情は犯罪行為かもしれないが、アルカイダが911の犯人ではないとした ら、犯罪視する前提が崩れる。
通貨から始まったアジア統合
【2006年5月9日】 アジア諸国が、従来の「ドルこそ命」の態度をやめて、ドルを見捨てることを意味するアジア通貨単位の活用を、ASEAN+3とい う多国間で決定し、表明したのは、もはやアジア諸国がドルを買い支えても、ドルの急落は避けられない情勢になったとアジア諸国が総意として判断したからに 違いない。アジアでドルが唯一の基軸通貨だった時代が終わる過程が始まったが、同時にドル下落でアメリカの消費力が落ち、世界が不況に陥る懸念が増してい る。
IMFが誘導するドルの軟着陸
【2006年5月2日】 1985年の「プラザ合意」では、円とマルクの対ドル相場を切り上げたが、今回は、円とユーロ、人民元、韓国ウォン、サウジアラ ビア・リヤルなど、広範囲な諸通貨のすべてが切り上がることになりそうで「大プラザ合意」とも呼ぶべき新構想が提案されたことになる。プラザ合意では、関 係国の米日独はすべてG7に加盟していた。その後の世界の経済運営も、G7が取り仕切ってきた。だが今後の大合意は、中国やサウジといったG7以外の国の 参加が不可欠だ。それで、大合意を実現するため、G7からIMFに機能の一部を移転しようという話になっている。
非米同盟がイランを救う?
【2006年4月25日】 アメリカに自国の商品を買ってもらえなくなると困る中国は、アメリカと正面切って対立することを望んでいない。それでは中国 は、どのようにしてアメリカの破壊行為を止め、イランが戦争に陥るのを止められるのか。最近の動きから私が感じる答えは「外堀から埋めていく戦略が採られ ているのではないか」ということだ。「外堀」とは、世界各地の親米国や、アメリカにとって重要な国々のことで、堀を埋め立てる材料は札束、つまり経済であ る。
イラン訪問記(2)民族の網の目
【2006年4月21日】・・・テヘランで聞いた小話に「アゼリ人はすでにイランを支配している」というのがある。最高権力者のハメネイ師はアゼリ人の血 が入っており、イラン経済界ではアゼリ人が強く、イランのサッカーチームの大人気の有名選手もアゼリ人だからだという。こういう話を聞くと、イランのアゼ リ人が反政府運動に無関心なのは納得できる。
イランは核攻撃される?
【2006年4月18日】 アハマディネジャドの大統領就任後、イランでは経済が回復せず、失業率も低下せず、大統領に対する不信任が強まっていた。イラ ン政界内で、対米協調派が復活しそうになっていたと考えられるが、そうした中でアハマディネジャドの不利な状況を吹き飛ばす効果をもたらしたのが「ブッ シュはイランを核攻撃することをすでに決めている」という一連の報道だった。
イラン訪問記
【2006年4月14日】・・・裕福層とは反対に、貧困層はアハマディネジャドに期待している。ペルシャ湾岸の貧しいブッシェール州で、乗り合い長距離タ クシーの中でとなりに座った青年は、イランの地方では珍しくカタコトの英語ができた。彼は私と話すうちに、自宅に来ないかと誘ってくれ、私は農村にある彼 の自宅に一泊することになったのだが、彼は、石油収入を広く貧困層に分配すると宣言したアハマディネジャドは、前任の金持ち法学者のハタミ大統領より良い と言っていた。
ネオコンと多極化の本質
【2006年3月31日】 次期大統領になりそうなヒラリー・クリントンやコンドリーサ・ライスは「中東民主化貫徹」「イスラエル断固支持」といったネオ コン路線を継承することで、実はイスラエルを潰して世界を多極化する金融資本家の策動に乗っている。ヒラリーもライスも「隠れ多極主義者」というわけだ。
拡大する双子の赤字
【2006年3月23日】 「アメリカは赤字が増えても、当局がドル札を印刷するだけで良いのだから問題ではない」という見方は間違いである。世界の人々 が、決済や貯蓄のために保有する通貨をドルにしておきたいと考えるのは、アメリカには経済力、外交力、軍事力があり、発展性と安定度が高くて有事にも強い からだった。ところが今やアメリカは、製造業が死滅して経済は危機、先制攻撃戦略の強行で外交的にも信用されず、イラク占領の泥沼で軍事力を浪費してい る。潜在的に、ドルはかなり危険な状態だ。
自滅したがるアメリカ
【2006年3月14日】 ブッシュ政権がインドに核技術を供与したり、米議会がドバイ・ポーツ・ワールドのアメリカ6港の運営権獲得に反対したことは、 いずれも反アラブや反中国、軍事産業強化といった、タカ派の戦略を反映しているように見えながら、よく見ると外交的、経済的にアメリカを自滅に追い込む一 方で、反米や非米の諸国の台頭を誘発し、世界の多極化が推進される結果を生み出すものとなっている。
日本を不幸にする中国の民主化
【2006年3月7日】 中国で共産党の独裁が崩壊しても、その後、日本にとって好都合な内部分裂した状態がずっと続くとは限らない。独裁が崩壊して民主 化した後、カリスマ的な
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