人権侵害に対するコロンビア政府の関与
2009年5月4日
ギャリー・リーチ
ColombiaJournal原文
http://www.jca.apc.org/%7Ekmasuoka/
ほとんど毎週のように、人権侵害に対するコロンビア政府の関与が新たに暴露されている。この数週間の間に、次のようなことが伝えられている。コロンビア政府と軍の高官が右派準軍組織と共謀して、虐殺犠牲者の遺体を焼き払い、準軍組織に殺された人々の数を隠蔽しようとしたこと、コロンビア最大の準軍組織が2002年の大統領選挙でアレバロ・ウリベ大統領に資金を提供していたこと、軍の対ゲリラ戦略が人道危機の悪化を引き起こしていること。こうした問題の発覚の直前には、コロンビア軍がこの数年、対ゲリラ戦略の一貫としてますます多くの超法規的処刑を実行していることの証拠が秋らかにされ、また、選挙で選ばれた政府関係者が準軍組織に関係していたという準軍組織政治スキャンダルも発覚していた。コロンビア軍がますます深く人権侵害に関与していることに対し、英国政府は最近、コロンビアに対する軍事援助を停止すると発表した。対照的に、米国政府とカナダ政府は人権危機を無視して、コロンビアとの間で二国間自由貿易協定を推し進めようとしている。
コロンビア自警軍連合(AUC)の名で知られる、解隊した準軍組織の元司令官だったサルバトーレ・マンクソは、彼のもとでAUCの兵士たちは虐殺の犠牲者を数百人規模で体系的に焼き払ってきたと証言した。マンクソによると、遺体を焼き払う決定は、AUCの最高司令官とコロンビア政府高官および軍の上級士官の間でもたれた会議によって決まったという。その目的は、AUCが犯す虐殺がますます目につくものとなっていたため、準軍組織による殺害の犠牲者数を少なく見せることにあったという。虐殺犠牲者の遺体を掘り起こして、ベネズエラとの国境近くに造った焼却炉で丸焼きにしたという。
マンクソがこの証言をした直前には、別の元AUC司令官が、AUCは2002年の大統領選挙にあたってウリベ大統領に資金を提供していたと発表していた。「ドン・ベルナ」の呼び名で知られるディエゴ・ムリージョはウリベ大統領がアンティオキア州知事だったときに、同州の準軍組織部隊と麻薬取引活動を率いていた。ムリージョがウリベの選挙活動に「大量の資金」を提供したと主張した事実は、準軍政治スキャンダルが進行中であるという文脈の中で、とりわけ問題である。コロンビアでは、60人以上の国会議員—-その圧倒的大多数はウリベ大統領派だった—-が、現在、準軍組織への関与で投獄されたり取調べ中でなのだから。
それに加えて、ウリベが大統領となってから、コロンビア軍が行う超法規的処刑の数が激増している。現在、2002年以来起きた超法規的処刑1296件が調査の対象となっている。コロンビア軍兵士達は、民間人を処刑してから遺体に迷彩服を着せて、戦闘中に殺されたゲリラであるように見せかける「フォールス=ポジティブ」[偽の容疑者]作戦を行ってきた。
現在コロンビアで進行中の人権侵害の中でも最も悩ましい問題は、おそらく、コロンビア農村部における住居や地域からの強制追放が危機的に悪化していることだろう。ボゴタに本部を置く「人権と追放のコンサルタンシー」(CODHES)によると、昨年一年間で、38万人以上のコロンビア人が暴力により強制的に住処を追放されたが、これはその前年比24パーセントの増加であり、2008年はその結果、過去20年を通して最悪の年となった。400万人以上の国内避難民がいるコロンビアは、スーダンに次いで、国内避難民数ワースト2である。
難民危機を悪化させている大きな要因は、コロンビア軍の攻撃的な対ゲリラ作戦にある。コロンビア軍兵士が、伝統的にゲリラが支配していた地域のコミュニティを強制的に追放しているからである。「ノルウェー難民評議会」によると、「政府の軍事戦略は、予防的意図を持つというが、実際には人々の追放を増進している」。
住民追放の多くは、伝統的にゲリラが制圧していた地域で、軍や新たに結成された準軍組織によって行われている。それらの地域には貴重な資源や経済的に恵まれた土地がある。コロンビアの太平洋岸、特にナリニョ州とチョコ州では、アフリカ系コロンビア陣と先住民が数千人規模で強制的に住むところを追われている。追放したあとの土地でアフリカヤシを育てる—-そのほとんどはグローバル・ノースの富裕国の農作物燃料に対する需要増をまかなう—-ためである。同様に大規模な住民の追放は、鉱山地帯でも起きている。多国籍企業がコロンビアの豊富な鉱物資源を採掘しようとしているためである。米国政府とカナダ政府が推進する二国間自由貿易協定により、コロンビア経済は海外投資—-とりわけ資源採掘部門—-にさらに開かれるため、確実に、コロンビアの難民危機をさらに激化することになるだろう。
昨年の米国大統領選挙戦で、現米国大統領バラク・オバマは、人権問題を理由に、協議中の米=コロンビア自由貿易協定を批判した。けれども、オバマはどうやら立場を変えたようで、最近になって、アメリカ合衆国通商代表部のロナルド・カークに、コロンビア政府および議会と調整をとって、貿易協定の障害に対処し、協定に署名するよう求めた。一方、カナダのスティーヴン・ハーパー首相と保守党は、コロンビア大統領ウリベとの間で昨年11月に書名された自由貿易協定を批准するようカナダ議会に求めている。
カナダ政府は、大多数のカナダ人の希望に反して、この協定を推進しようとしている。2007年7月の世論調査では、カナダ人の73パーセントが、連邦政府は疑わしい人権記録を持つ句にとの間で自由貿易協定交渉を行うべきではないと言っていた。同じ月に、ハーパー首相は西半球で最悪の人権記録を持つコロンビアとの自由貿易交渉に対する批判に応えて、次のように断言した。「我々は『あなたのところの社会問題、政治問題、人権問題をすべて解決しろ。そうしたら、あなたのところと貿易関係を持とう』などとは言わない。それは馬鹿げた立場だからだ」。
米国政府もカナダ政府もともにハーパー流の信念に従い、コロンビアの恐ろしい人権危機にウリベ政権が果たしている役割を無視して、問題含みのこの南米の国と自由貿易協定を結ぼうとしている。対照的に、英国政府—-コロンビアに対する世界第二の武器提供国—-は最近、コロンビア国家が人権侵害に関与していることを理由に、ウリベ政権に対する軍事援助を削減すると発表した。下院での発言の中で、英国外務大臣デイヴィッド・ミリバンドは次のように述べた。「コロンビア政府の課題は、我々が促進支援をしている戦略的人権原則をコロンビア軍の全兵士に周知し、一貫して実践させることにある」。バラク・オバマとスティーヴン・ハーパーは、コロンビアとの二国間自由貿易協定を実現したがるあまり、この課題をコロンビア政府に突きつけることを拒んでいる。
■ 「沈黙を破る」ロードショー
土井敏邦監督製作ドキュメンタリー映画『沈黙を破る』、東京を皮切りに全国でロードショーが予定されています。単にイスラエルとパレスチナの問題を考えるというだけでなく、日本のこと、貧困問題など、いろいろなことを考えるためにもとても大切な映画です。
上映地お近くの方は、ぜひ、ご覧下さい。
■ 南京事件を描いた映画「ジョン・ラーベ」の日本公開を求める署名
署名プロジェクトURL: http://www.shomei.tv/project-897.html
ぜひどうぞ!
■ 北東アジアの核・ミサイル軍縮に向けて
宇宙基本計画案へのパブリック・コメントが18日まで募集されています。「宇宙基本計画=宇宙の軍事利用」に反対するコメントを送ってくださいと「核と防衛ミサイルにNo!キャンペーン」から連絡がありました。
詳しくは、
北東アジアの核・ミサイル軍縮に向けてHPをご覧ください。このサイトには、イベント情報なども盛りだくさんです。
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